九州大学への提言 II (1998年1月20日柴田教務委員会委員長へ提出)
21 世紀に九州大学の目指すべきもの
1. 新たな目標
九州とくに福岡近辺は日本の文明の発祥の地であり、またモンゴル文化の侵入を
防いだのも九州の地であった。歴史的に見て、福岡は長年にわたり文化交流と交
易の中心であり、近代文明の開化においても九州は重要な役割を果した。しかし、
九州大学の始まりは京都大学の分校であり、学問上も一部の領域を除いてそれら
の後塵を拝していたし、残念ながらどの尺度をとっても旧七帝大のなかで6、7
位に位置するといわれている。
東京近辺および京都近辺を二つの極とすると、今福岡は日本の学問文化の第3の
極として発展してきており、九州大学はその中心となるべきものである。九州大
学は、リベラルアーツ、メデイカルスクール、エンジニアリングスクール, アグ
リカルチャラルスクールからなる総合大学として、全国において活躍できる人材、
世界において活躍できる研究者を育成するとともに、世界で通用する研究の中心
地となることを目指すべきである。すなわち、``九州の東大"ではなく、``日本
の第3の極"を目指すべきである。
2. 教育の理念
学部新入生は、人格形成の過渡期にあり、また将来の専門とするべき学問分野を
決定するための情報も限られたものしか持っていない。総合大学であることを最
大限生かして、人格形成のための教育を行う。また、初年次の教育を通して専門
分野を確定させ、社会に出て指導的役割を果たせる学士を育成する。
大学院の教育・研究は、それぞれの分野の専門家として世界に通用する研究の発
信を行い、日本だけでなく世界のなかで活躍できる研究者を育てる。
3. 改革すべきこと
a. 大学入試
・個別入試を廃止し、すべて推薦入試とする
・専門分野を細かく縛らない入学許可
・高校においてバランスのよい生活をしたもので、九州大学で教育したい
学生を受け入れる
・入学者判定を行う専門部局をおく
b. 共通教育の充実
・理科系基礎としての数学、物理学教育の充実
・外国語教育の充実
・語学力、作文能力の向上
・文科系基礎科目の充実
・大学教養教育(共通教育)は各部局・学科が提供する科目から構成する
・教官の質の向上、とくに学生による講義の評価制度の確立と選別
・クラス担任、学年担任
・フレッシュマンアドバイザー
・プロベーション制度(各学期ごとの単位取得状況に応じて警告を行う)
c. 教官組織
・初任者に任期制をおく
・教官のサバテイカル制度の導入
・助手からの昇任を原則として認めない
・学部と大学院前期課程の組織をほぼ一致させ、教官組織はそれと一致さ
せる
・物理学関連の基礎科目担当者を同じ部局所属にする
d. 事務機構
・予算の単年度制の廃止
・予算執行の簡素化
e. キャンパスの配置
・総合大学としての共通教育を行うためには、キャンパスの分散化を避ける
べきである